自公政権のコロナ禍での経済支援策を振り返る その2

引き続き、自公政権の経済支援策について、振り返る。

3.休業や時短をしている飲食店等に対する協力金等の支払い

4.GoToトラベル

 

事業者への支援策の中で最も目立っているのが、休業や時短をしている飲食店への協力金だ。

制限をするなら補償もセットですべしという指摘は早くからされていたが、

安部菅内閣には補償などしていたら財政が破綻しますという財務省のご忠告が響いたのだろう。

制限ではなく要請にして、対象も特に感染への影響が大きい飲食店だけにしましょうと。そうなれば、協力金という位置づけで財政への影響も大きくならない。

この方針が決まった時に財務省はさぞほっとしただろう。

 

協力金といってもいくらでも出るわけではない。上限は知れていて個人営業の飲食店はむしろありがたがっているという話もあるが、大きな飲食店にとっては焼け石に水だということだ。

 

飲食店以外でも完全に休業にすれば協力金がもらえるらしいが、金額は東京都の場合で上限が2万円らしい。これでは個人店舗以外は割に合わないだろう。

 

実質的に個人の店舗や飲食店にしか効果がない協力金となっているわけである。

飲食店への時短要請の内容も実に中途半端なもので、夜8時までというような中途半端なものである。

 

本来であればテレワークについても呼びかけるだけでなく、本気でするのであればインセンティブをつける必要がある。そうしたことが顧みられることも一切なかった。

 

このような中途半端な支援策では、いざという時の人流抑制効果がないのはいたしかたないことであろう。

 

 

最期にGoToトラベルにも触れておかなくてはならない。

これは間違いなく世紀の大愚策である。自民党の総裁選候補たちは自党の否定になるので認めないであろうが、これを的確に批判できない野党は信頼できないと思った方がいい。

 

GoToトラベルに対する批判には2種類ある。「感染状況が落ち着いていないのに実施するのは間違っている」というものと「感染状況は関係なく、そもそも感染を広げるような支援策をすべきではない」というものである。

的確な批判は後者である。

この支援策は旅行の振興に関心の高い当時の菅官房長官の肝いりのものであったらしい。そのため、いまだに政府は公式見解としてGotoトラベルが感染拡大に与える影響を認めていない。まったくもって信じられないことではあるが。

お出かけすれば感染リスクが高まるからお出かけを自粛してくださいと言っておいて、旅行は感染リスクにつながりません。こんな屁理屈は小学生にすら通じないぞ。

 

苦しい旅行業界を支援したい。その思いは全く悪くない。その方法がまったく馬鹿げているだけである。旅行への補助という形以外の支援策も考えられたはずである。

直接的に旅行業者を支援金を配るという方法にすべきだったのだ。

 

おそらく「自助共助公助」をうたう菅総理の働かざるもの食うべからずという素朴な思想がGotoトラベルにつながったのであろう。

「何もしていない業者にお金を配るなんてとんでもない、頑張ってお客さんをとっている旅行業者を支援すべきだ」彼はきっとそう考えたのだと思う。

この支援策が日本の感染者数をひとつ上の段階に引き上げ、それが自分の首を絞めることになろうとは露ほども思っていなかったに違いない。

 

GoToトラベルは旅行代金の50%ものお金が給付される太っ腹なサービスである。利用した国民はさぞいい思いをしただろう。一部の国民にいい思いをさせ、次の選挙ではその見返りとでも考えたのではないかと邪推してしまう。見方を変えれば立派な収賄罪である。

だいたい旅行ができる人というのは比較的恵まれている人である。お金持ちに所得を移転しているようなもので、税金を原資にして何をやっとんねんという話である。

 

旅行会社を通じた旅行だけが対象なので旅行会社に恩をうることにもなっただろう。

 

給付率が非常に高いため、普段泊まれないような宿泊施設が人気になって、手ごろな宿泊施設は逆にお客さんが減ってしまったという歪みも生じていたようである。

 

こうしてみるといかにGotoトラベルが筋の悪い世紀の大愚策であったかが理解できると思う。

 

長々と書いてきたが、こうした支援策の失敗は劣化した政治の帰結である。

そして、こうした政治をうみだしたのは、ひとえに政治と真剣に向き合ってこなかった有権者自身であることは肝に銘じるべきであろう。